事業用リースバックで資金調達|工場・店舗・機械の売却と賃借の仕組み

📋 この記事でわかること

リースバックは、工場・店舗・倉庫といった不動産や機械・設備を売却して資金を得ながら、そのまま賃借(リース)して使い続けられる資金調達の方法です。この記事では、事業用リースバックの仕組みと対象資産、査定から契約までの流れ、売却価格と賃料・買戻しの関係、融資やABL・ファクタリングとの違い、会計・税務の注意点、悪い契約を避ける着眼点までを解説します。価格や賃料の水準は執筆時点の一般的な目安です。

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目次

1. 事業用リースバックとは?売却して賃借に切り替える仕組み

リースバックとは、自社が保有する資産をいったん売却して代金を受け取り、その資産を売却先から賃借(リース)してこれまでどおり使い続ける取引です。英語では「セール・アンド・リースバック」と呼ばれ、事業用では工場・店舗・倉庫や製造機械・設備を対象に、運転資金や設備投資、借入返済のために使われます。工場を売れば製造が止まり、店舗を売れば営業できない——そうした事態を避けつつ、資産に固定された価値を現金に換えられるのが最大のねらいです。

実際に事業用リースバックが検討されるのは、たとえば銀行融資の枠を使い切ってしまった、決算内容が悪化して追加の借入が通りにくい、あるいは相続や事業承継でまとまった納税資金が必要になった、といった局面です。売上そのものは立っているのに手元の現金だけが足りないというケースで、事業を止めずに資産の価値を現金へ振り替えたいときに向いています。逆に、その資産をいずれ手放してもかまわない場合は通常の売却のほうが手取りは大きくなりやすく、使い続ける必要性があるかどうかが最初の分かれ目になります。

2. 事業用リースバックで対象になる資産|不動産・機械・設備

事業用リースバックの対象は、大きく「不動産」と「動産(機械・設備)」に分かれます。不動産は自社工場・店舗・倉庫・事務所ビルなどの土地・建物、動産は製造機械・工作機械・建設機械・業務用車両・医療機器などで、立地のよい不動産や中古市場が確立した汎用機ほど評価がつきやすくなります。不動産は金額が大きく調達額も大きい一方、機械・設備はリース会社が買い取ってリース契約に切り替える形が中心で、比較的スピーディーですが一件あたりは小さめです。

評価がつきやすい資産の目安として、不動産なら幹線道路沿いや工業団地内など再賃貸・再販売の見込みが立つ立地、動産なら国内外に中古需要のある汎用旋盤・マシニングセンタ・射出成形機・フォークリフトなどが挙げられます。反対に、特注の専用ラインや設置・撤去に多額の費用がかかる大型設備、年式が古く部品供給が終了した機械は、買い手が転売しづらいため評価が伸びにくい傾向があります。自社のどの資産が資金化に向くかを、型式・年式・稼働時間まで書き出して整理しておくと、相談が進めやすくなります。

3. なぜ資産を使いながら資金化できるのか|所有から利用への発想

リースバックが成り立つのは、「資産を所有すること」と「利用すること」を切り離せるからです。事業に必要なのは資産を「持っていること」ではなく「使って商売できること」で、所有権を手放しても賃貸借契約で使い続ける権利を確保できれば事業は続けられます。ただし利用に切り替えれば賃料という固定費が新たに発生し、含み益・含み損も実現するため、その代償も含めてメリットと見合うかを判断することが大切です。

4. リースバックの基本的な流れ|査定から契約・賃借まで

事業用リースバックは、相談、対象資産の査定と条件提示、売買契約と賃貸借契約の締結、売却代金の受領、賃料の支払いと継続利用、という流れで進みます。査定では不動産なら立地・築年数・面積、機械なら型式・年式・稼働状況から資産価値を見積もり、売却価格と賃料はセットで提示されるため、片方だけで判断しないことが重要です。契約では売買契約書と賃貸借契約書の両方を交わし、賃料額・契約期間・更新の可否・修繕の負担・買戻し特約の有無などを取り決めます。

準備する書類の目安は、不動産なら登記事項証明書・公図・固定資産税の評価証明、機械なら型式や年式のわかる仕様書・保守記録・購入時の請求書などです。相談から代金の受領までは、動産だけなら数週間、不動産を含む場合は登記や契約調整に時間がかかり一〜二か月程度を見込むのが一般的です。急ぎの資金需要があるときでも、条件を詰めないまま署名を急ぐと不利な賃料や買戻し条件を抱え込みやすいため、スケジュールには少し余裕を持たせておきましょう。

5. 売却価格と賃料(リース料)の関係|買戻しの考え方

リースバックで欠かせないのが、売却価格と賃料が表裏一体で決まる点です。買い手は購入代金に対する賃料収入(利回り)で条件を決めるため、売却価格を高くすれば賃料も高くなりやすく、賃料を抑えれば売却価格が下がります。

5-1. 売却価格は市場価格より低めになりやすい

売却価格は、通常の売却で期待できる時価評価より低めになりやすい傾向があります。買い手は賃料収入や将来の転売を前提に投資として買うためで、市場価格の数割程度低くなることもあると考えておきましょう。

5-2. 賃料と買戻しの取り決め

賃料は売却価格に一定の利回りを掛けた水準で決まります。将来また自社の所有に戻したい場合は「買戻し特約」や「再売買の予約」を結べますが、買戻し価格は売却価格より高いことが多く、その価格と時期を契約時にはっきりさせておくことが欠かせません。

数字のイメージをつかむと、たとえば年8%程度の利回りを見込む買い手であれば、1億円で売った場合の年間賃料はおよそ800万円という水準感になります。利回りを低く抑えれば賃料は下がりますが、その分だけ売却価格も下がるため、手取り額と毎月の固定費はセットで動くと考えてください。これらの数値はあくまで執筆時点の一般的な目安で、資産の種類や立地、買い手の方針によって上下します。売却価格・賃料・想定期間を一枚の表に並べ、総支払額まで含めて複数社を比べることが、割高な条件を避ける近道です。

6. 不動産(工場・店舗・倉庫)のリースバック

工場・店舗・倉庫・事務所といった事業用不動産のリースバックは金額が大きく、融資が受けにくくなった局面でも不動産そのものを現金化できます。所有権移転登記と同時に賃貸借契約を結びますが、契約期間が短ければ更新できず立ち退きを求められるリスクがあり、長期なら継続性を確保しやすくなります。普通借家か定期借家か、更新条件や修繕負担を慎重に確認し、買戻しの見込みや長期の賃料負担まで含めて検討しましょう。

賃貸借契約では、普通借家と定期借家のどちらを結ぶかが特に重要です。普通借家は正当な事由がなければ貸主から更新を拒めないため借り手が継続しやすい一方、定期借家は期間満了で契約が終了し、再契約するかどうかは貸主の意向しだいになります。事業の拠点として長く使い続けたい工場や店舗であれば、契約期間の長さと更新条件、途中解約時の違約金、修繕や原状回復の負担範囲までを書面で確かめ、口頭の説明だけで判断しないことが大切です。

7. 機械・設備のリースバック|セール・アンド・リースバック

製造業・建設業などでは、機械・設備を対象にしたリースバック(セール・アンド・リースバック)も使われます。自社の機械をリース会社に売却してリース契約で借り直し、リース料を毎月払いながら使い続け、満了時には返却・再リース・買取に切り替えます。押さえたいのはリースの種類で、途中解約できず購入に近い「ファイナンス・リース」と、短期で解約や返却の柔軟性がある「オペレーティング・リース」では扱いが異なるため、途中解約の可否や満了後の扱いを契約前に確認しましょう。

具体的には、コピー機やサーバーのように数年で入れ替える設備は解約や返却の柔軟なオペレーティング・リース向き、長く使い込む主力の生産設備は総額では割安になりやすいファイナンス・リース向き、といった住み分けになります。満了時に買い取って再び自社資産に戻す場合の価格や、再リース時の料率も契約前に確かめておきましょう。リース料は原則として毎月の費用になりますが、契約の種類によって会計・税務の扱いが変わるため、金額が大きいときは処理方法もあわせて確認しておくと安心です。

8. リースバックと融資・ABL・ファクタリングの違い

資産を活かした資金調達のうち、リースバックは「資産の売却」に特徴があります。銀行融資やABL(動産・売掛金担保融資)は資産を担保にする「借入」で返済義務のある負債が増えますが、リースバックは資産そのものを売って代金を受け取ります。よく比較されるファクタリングは売掛債権を売る手段で使い続ける要素はなく、リースバックは売った資産を賃借して使い続ける点が独自で、手放せない機械や店舗の資金化に向きます。

9. 会計上の扱い|売却損益とリース料の処理

リースバックは資産の売却を伴うため、会計上はまず売却損益が生じ、売却価格が帳簿上の簿価を上回れば売却益、下回れば売却損です。事業用の売却価格は市場価格より低めになりやすいため、含み益のある資産でも思ったほど利益が出ないこともあります。売却後のリース料は原則費用計上しますが、ファイナンス・リースに該当する場合は資産・負債を計上する処理が求められることがあり、影響が大きいときは決算前に税理士や会計士へ相談しましょう。

10. 税務上の注意点|譲渡所得・消費税・買戻し時の諸費用

個人事業主が事業用不動産などを売った利益は譲渡所得として課税され、法人では売却損益が事業年度の所得に取り込まれます。建物や機械の売却は消費税の課税対象ですが土地は非課税のため一括売却では代金の按分が必要で、買戻しには不動産取得税や登録免許税もかかるため、金額の大きい取引では契約前に必ず税理士へ確認しましょう。

申告面では、法人は売却損益を決算に取り込むだけで済むことが多い一方、個人事業主は譲渡所得として事業所得とは別枠で申告する必要があり、所有期間が五年を超えるかどうかで税率の区分も変わります。売却益が大きい年は納税資金の準備も欠かせません。土地と建物を一括で売るときの代金按分の考え方や、買戻しにかかる不動産取得税・登録免許税の見積もりは判断を誤りやすい部分なので、契約前に税理士へ具体的な数字で確認しておきましょう。

11. メリットと注意点|どんな事業者に向くか

事業用リースバックのメリットは、事業の要になる資産を手放さずにまとまった資金を確保できる点です。売却なので借入のように負債が増えず、追加融資が難しい局面でも選択肢を広げられます。一方で次のような注意点があり、利用前に確認しておきましょう。

  • 売却価格と賃料(利回り)が、市場の相場に照らして妥当か
  • 賃貸借契約の期間・更新条件・修繕負担など、事業を続けられる中身か
  • 買戻しを想定するなら、その価格・時期・取得コストが明確か
  • 売却損益・消費税・譲渡所得など、税務の影響を専門家に確認したか

割高な賃料や不利な契約条件を抱え込むと資金繰りを圧迫しかねないため、一社の提示だけで決めず、資金効果と長期の負担を並べて見極めましょう。

12. 契約前に確かめたいこと|条件比較と専門家への相談

事業用リースバックは事業者同士の取引で、消費者向けのクーリングオフのような保護が及びにくいため、契約内容を自分で精査する必要があります。賃料が相場より高すぎないか、買戻し条件が現実的か、賃貸借契約の期間や更新条項が事業の継続を妨げないかを書面で確かめましょう。一社だけで決めず複数の会社に相談して相見積もりを取り、急かされていると感じたら税理士や会計士など複数の専門家の目を通してから最終判断をしましょう。

進め方の手順としては、まず資金化したい資産と必要額を書き出し、複数の会社へ同じ条件で見積もりを依頼します。次に、提示された売却価格・賃料・契約期間・買戻し条件を一覧に並べて比べ、総支払額と手取り額の両面から検討します。最後に、契約書の文言を税理士や会計士など第三者に確認してもらってから署名する、という三段階を踏むだけで、勢いで不利な契約を結んでしまう失敗は大きく減らせます。少しでも腑に落ちない点があれば、その場で署名せず持ち帰って確認しましょう。

13. まとめ:リースバックは資産を使いながらの資金化、価格・賃料・税務を見極めて選ぶ

事業用リースバックは、不動産や機械・設備を売却して資金を得ながら、賃借してそのまま使い続けられる資金調達の方法です。「所有から利用へ」の発想で事業に不可欠な資産を手放さず現金化できますが、売却価格は市場価格より低めになりやすく、売却価格と賃料は表裏一体で決まるという基本構造の理解が欠かせません。まずは自社のどの資産をどのくらい資金化したいかを整理し、複数社に価格と賃料を並べて比べ、税理士など専門家の確認を得たうえで検討してみてください。

よくある質問(FAQ)

事業用リースバックとは、どのような資金調達方法ですか?

保有する工場・店舗・倉庫などの不動産や機械・設備を売却して代金を受け取り、その資産を賃借(リース)して使い続ける取引です。英語ではセール・アンド・リースバックと呼ばれます。所有権を手放しても使い続ける権利を確保できるため、事業を止めずに現金化でき、運転資金や借入返済の資金を得たいが資産は手放したくない事業者に向いています。

リースバックではどんな資産を対象にできますか?

大きく不動産と動産に分かれます。不動産は工場・店舗・倉庫・事務所ビル・社屋などの土地・建物、動産は製造機械・工作機械・建設機械・業務用車両・医療機器・OA機器などの高額な設備です。中古市場が確立した汎用機や立地のよい不動産ほど評価がつきやすく、いずれも「売っても使い続けたい」資産である点が共通します。

売却価格は市場価格と同じになりますか?

通常の売却で期待できる市場価格より低めになりやすい傾向があります。買い手は賃料収入や将来の転売を前提に投資として買うため、相場そのままでは引き合わないことが多いからです。市場価格の数割程度低くなることもあり、使い続けながら早く資金化できる対価として、価格面では割り引かれると考えておくとよいでしょう。

リースバックと融資(借入)は何が違いますか?

融資は資産を担保にしたり信用で借りたりする「借入」で、返済義務のある負債が増え、所有権は自社に残ります。ABL(動産・売掛金担保融資)も担保による借入です。これに対しリースバックは資産そのものを売って代金を受け取る取引で、返済はなく代わりに賃料を払って使い続けます。負債を増やさず現金化できる一方、賃料という固定費が新たに発生する点が異なります。

売却した資産は将来買い戻せますか?

契約時に「買戻し特約」や「再売買の予約」を結んでおけば、将来また自社の所有に戻せる可能性があります。ただし買戻し価格は当初の売却価格より高く設定されることが多く、不動産なら不動産取得税や登録免許税といった取得コストもかかります。資金の目処が立たなければ買い戻せないため、価格・時期・費用を契約時にはっきりさせておきましょう。

リースバックの会計処理はどうなりますか?

売却価格が帳簿上の簿価を上回れば売却益、下回れば売却損として認識するのが基本です。売却後のリース料は原則として費用処理しますが、ファイナンス・リースに該当する場合は資産・負債を計上する処理が求められることがあります。売却益の計上時期など実態に応じた処理が必要な場面もあるため、影響が大きいときは決算前に税理士や会計士へ相談すると安心です。

税金はどのようにかかりますか?

個人事業主が事業用不動産などを売って利益が出た場合は譲渡所得として課税され、所有期間に応じて税率が変わります。法人では売却損益が事業年度の所得に取り込まれます。建物や機械の売却は消費税の課税対象ですが土地の売却は非課税のため、一括で売る場合は代金の按分が必要です。買戻し時には不動産取得税や登録免許税もかかります。事前に税理士へ確認しましょう。

不利な契約を避けるにはどうすればよいですか?

事業者同士の取引はクーリングオフのような消費者保護が及びにくいため、契約内容を自分で精査することが欠かせません。賃料が相場より高すぎないか、買戻し条件が現実的か、賃貸借契約の期間や更新条項が事業継続を妨げないかを書面で確認しましょう。一社だけで決めず複数社に相談して売却価格と賃料をセットで比べ、急かされたら専門家の確認を得てから判断してください。

✏️ 神山 哲也より

資金繰りの現場を取材していると、「この工場だけは手放せない」「店を売ったら商売そのものが終わる」という経営者の声によく出会います。事業の要になる資産ほど簡単には売れない。だからこそ、売っても使い続けられるリースバックに光を感じる方が多いのだと思います。ただ必ずお伝えしたいのは、リースバックは「売却」であって、いいことばかりではないという点です。売却価格は市場より低めになりやすく、その後は賃料という固定費が長く続き、買戻しには売った額を上回るお金と税金がかかります。資金が入る安心感で契約を急がず、売却価格と賃料をセットで複数社に出してもらい、税務や契約条件は税理士や専門家に確かめる。この二つを守るだけで、資産を活かす資金調達の安全度は大きく変わります。

監修:税理士 増田 良之

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この記事を書いた人

編集長 / 買取・終活・断捨離の取材歴12年。大手リユース業者・遺品整理現場・ファクタリング会社を取材してきた中堅編集者。「持っているものを、損せず安全に現金に変える」を編集方針として、全体構成と監修者(税理士・行政書士)調整を統括。ピラー「現金化とは」と事業・不動産・資金調達カテゴリを主担当。

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