📋 この記事でわかること
ABL(Asset Based Lending=動産・売掛金担保融資)は、不動産に頼らず、在庫(棚卸資産)や機械設備、売掛金といった事業の資産を担保にして資金を借り入れる方法です。この記事では、ABLの基本的な仕組みと担保にできる資産の範囲、担保評価で使われる「掛目(かけめ)」の考え方を整理します。あわせて、在庫・機械・売掛金をそれぞれ担保にする場合の流れと注意点、通常の融資(プロパー融資)やファクタリングとの違い、譲渡担保としての会計・税務上の扱いや対抗要件まで、不動産担保や個人保証に頼らず資金調達したい中小事業者にも分かるように解説します。掛目や金利の水準は執筆時点の一般的な目安として、複数の金融機関を比べる材料にしてください。
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1. ABLとは?不動産に頼らない資産担保の資金調達
ABLとは、Asset Based Lending(アセット・ベースト・レンディング)の略で、日本語では「動産・売掛金担保融資」と訳されます。企業が持つ在庫や機械設備、売掛金といった事業資産を担保として金融機関から資金を借り入れる仕組みで、「ABL とは」と調べる方の多くは、担保にできる不動産を持たない中小事業者や、個人保証に頼らずに資金を調達したい経営者でしょう。土地や建物の代わりに、日々の商売で使っている「モノ」や「売掛の権利」を担保にできる点が、従来の融資と大きく異なります。
日本の中小企業向け融資は、長らく不動産担保と経営者の個人保証を前提に組み立てられてきました。しかし、事業に使える不動産を持たない会社や、創業間もない会社にとっては、この前提そのものが資金調達の壁になります。ABLは、そうした会社でも、手元にある商品在庫や製造設備、取引先への売掛金といった「事業そのものが生み出す資産」を裏づけに資金を借りられるようにする発想です。
ABLは金融機関からの「借入」である点が特徴です。後で述べるファクタリング(売掛金の売却)とは性質が異なり、借りた元本は返済していく必要があります。そのうえで、担保が不動産ではなく事業資産である、という点にABLの独自性があります。まずは「不動産に頼らず、事業の資産を担保にする融資」という基本の位置づけを押さえておきましょう。
2. ABLで担保にできるもの|在庫・機械・売掛金
ABLで担保に取れる資産は、大きく「動産」と「債権」に分かれます。動産とは不動産以外の財産のことで、具体的には商品在庫や原材料、製品といった棚卸資産、製造機械や工作機械などの設備、農産物や家畜、木材、ワインといった特殊な在庫まで含まれます。債権は、取引先に対して代金を請求できる権利、つまり売掛金(売掛債権)が中心です。これらを単独で、あるいは組み合わせて担保にします。
どの資産が担保に向くかは、その資産の「換金しやすさ」と「価値の把握しやすさ」で決まります。たとえば、需要が安定していて相場が読みやすい在庫や、支払能力の高い取引先への売掛金は、担保としての評価がしやすく、金融機関も受け入れやすくなります。逆に、陳腐化が早い商品や、特注品で他に売り先のない機械は、いざというときの換金が難しく、担保評価が伸びにくい傾向があります。
ABLでは、これらの資産をまとめて担保にする「集合動産譲渡担保」「集合債権譲渡担保」という形が使われることが多いのも特徴です。在庫は日々入れ替わり、売掛金も回収と発生を繰り返すため、その時々に存在する在庫や売掛金の全体を、ひとまとまりの担保として扱う考え方です。個々のモノを一つずつ担保にするのではなく、「流動する資産の集合」を担保にする、という点がABLらしいところだといえます。
3. なぜABLが注目されるのか|不動産・個人保証への依存からの転換
ABLが注目される背景には、中小企業金融の見直しがあります。従来主流だった不動産担保と経営者個人保証への過度な依存は、不動産を持たない会社の成長を妨げたり、事業がうまくいかなくなったときに経営者個人の生活まで巻き込んだりする問題が指摘されてきました。国も、事業の内容や将来性、事業資産そのものを評価して融資する方向への転換を促しており、その受け皿の一つがABLです。
事業者側から見たABLの意義は、これまで資金化の対象と考えていなかった在庫や設備、売掛金を、資金調達の裏づけとして活用できる点にあります。とくに、在庫や売掛金は日々の商売のなかで大きな金額になりがちで、これらを担保にできれば、不動産がなくても事業規模に応じた資金を調達できる可能性が広がります。「在庫 担保 資金調達」という視点は、製造業や卸売業、小売業のように在庫を多く抱える業種にとって特に現実的な選択肢になります。
もう一つの利点は、金融機関との関係の質が変わりうることです。ABLでは、金融機関が担保である在庫や売掛金の状況を定期的に把握するため、事業の実態を共有しながら融資を続ける形になります。これは事業者にとって管理の手間が増える面もありますが、事業を理解してもらったうえで継続的に支援を受けやすくなる、という側面も持っています。
4. 担保評価の要|「掛目(かけめ)」の考え方
ABLを理解するうえで欠かせないのが「掛目(かけめ)」という考え方です。掛目とは、担保にする資産の評価額に対して、実際にいくらまで融資するかの割合のことで、「掛け目」「ヘアカット」とも呼ばれます。たとえば評価額1,000万円の在庫に掛目70%が設定されれば、その在庫を裏づけに借りられる金額の目安は700万円ということになります。担保の評価額がそのまま融資額になるわけではない、という点がポイントです。
なぜ評価額を割り引くのかというと、いざ担保を換金するときに、評価どおりの金額で売れるとは限らないからです。在庫は処分売りになれば相場を下回りやすく、売掛金も取引先の未払いで全額回収できないことがあります。金融機関は、こうした「換金時の目減り」や価格変動のリスクを見込んで、あらかじめ掛目で融資額を抑えているのです。担保資産の時価評価をどう行うかも、掛目と並んで融資額を左右する重要な要素になります。
4-1. 資産ごとの掛目の目安
掛目は資産の種類や換金のしやすさによって変わります。執筆時点の一般的な傾向として、支払能力の高い相手への売掛金は比較的高めの掛目が設定されやすく、相場の読みやすい汎用的な在庫は中程度、特殊性が高く売り先の限られる機械や陳腐化しやすい在庫は低めになりやすい、といった差が生まれます。おおまかなイメージを整理すると、次のようになります。
| 担保資産の種類 | 掛目の傾向 | 理由 |
|---|---|---|
| 優良先への売掛金 | 高めになりやすい | 回収の見通しが立てやすい |
| 汎用的な商品在庫 | 中程度 | 相場が読めるが処分で目減り |
| 機械・特殊在庫 | 低めになりやすい | 換金先が限られ評価が難しい |
あくまで一般的な目安であり、実際の掛目は資産の内容や金融機関の方針、事業者の信用状況によって個別に決まります。同じ「在庫」でも、扱う商品によって評価は大きく変わるため、表の数字を鵜呑みにせず、具体的な資産をもとに相談することが大切です。
5. 在庫(棚卸資産)を担保にする資金調達の流れ
在庫を担保にするABLでは、まず金融機関が対象となる棚卸資産の種類・数量・保管場所を確認し、その資産にどれだけの価値があるか、いざというときにどう換金できるかを評価します。評価には、専門の評価会社が関わることもあります。汎用性が高く需要の安定した商品ほど評価が立ちやすく、季節性が強い商品や流行に左右される商品は慎重に見られる傾向があります。
在庫は日々出入りするため、ABLでは「その時点で倉庫にある在庫の集合」を担保にする集合動産譲渡担保の形が取られるのが一般的です。融資後は、在庫の数量や金額を定期的に金融機関へ報告し、担保の状況を共有します。在庫が大きく減れば、担保価値も下がるため、報告の内容によって借入枠が調整されることもあります。
在庫担保のABLで注意したいのは、担保になっている在庫を勝手に処分できるわけではない、という点です。通常の営業のなかで在庫を売り、また仕入れる循環は認められますが、担保全体の価値を大きく損なうような処分は制限されます。日々の商売を続けながら在庫を担保にする以上、金融機関とのルールを正しく理解し、報告を怠らないことが円滑な利用の前提になります。
6. 機械・設備を担保にする場合の見られ方
製造業などでは、工作機械や生産設備といった機械類を担保にするABLも活用されます。機械は在庫と違って個別性が高く、一台ごとに型式・年式・メーカー・稼働状況が評価に影響します。汎用性の高い機械で中古市場が確立しているものは換金の見通しが立てやすく、担保として受け入れられやすい一方、特注の専用機や、その工場でしか使えないような設備は、売却先が限られるため評価が難しくなります。
機械の評価では、中古機械の市場価格や、同種の設備がどの程度の値で取引されているかが参考にされます。稼働年数が短く、メンテナンスが行き届いた機械ほど高く評価されやすく、逆に老朽化が進んだ設備や、修理歴の多い機械は評価が伸びにくい傾向があります。担保にする機械が正常に動くかどうかも当然見られるため、日ごろの整備記録が残っていると状態を正確に伝えやすくなります。
機械を担保にする場合も、対象を特定して譲渡担保に設定します。工場に据え付けられた大型設備などは、移設や換金に手間がかかるぶん掛目が低めになりやすい点は理解しておきましょう。機械は事業の要でもあるため、担保に入れた後も通常どおり稼働させながら、その価値を金融機関と共有していく形になります。
7. 売掛金(売掛債権)を担保にするABL
ABLのもう一つの柱が、売掛金を担保にする形です。取引先に商品やサービスを提供し、まだ入金されていない売掛債権を担保に取り、その回収見込みを裏づけに資金を融資します。売掛金は将来の入金が見込める権利であり、取引先の支払能力が高ければ回収の確実性も高いため、動産よりも掛目が高めに設定されやすいのが一般的です。
売掛金担保のABLでも、多数の取引先への売掛金をまとめて担保にする集合債権譲渡担保の形が使われます。売掛金は回収されると消え、新たな売上で発生する、という循環を繰り返すため、その時々に存在する売掛債権の全体を担保として扱う考え方です。金融機関は、売掛金の残高や取引先の構成を定期的に把握し、担保の状況をモニタリングします。
ここで注意したいのが、担保にする売掛金の「質」です。特定の取引先に売掛金が集中している場合、その取引先が支払えなくなると担保価値が一気に下がるため、評価が慎重になります。取引先が分散し、支払実績の安定した売掛金ほど担保として評価されやすい傾向があります。また、売掛金を担保にする際は、後述する対抗要件(債権譲渡登記など)を備えることが求められる場合がある点も押さえておきましょう。
8. ABL利用の手続きの流れ|申込からモニタリングまで
ABLの手続きは、通常の融資よりも担保資産の評価とその後の管理に重点が置かれます。おおまかな流れとしては、金融機関への相談・申込から始まり、担保にする在庫・機械・売掛金の評価、掛目や融資条件の決定、契約と担保設定(譲渡担保・登記など)、融資の実行、そして実行後の定期的なモニタリング、という段階を踏みます。担保の内容が複雑なほど、評価や契約に時間がかかることもあります。
ABLの大きな特徴が、融資実行後も続く「モニタリング」です。金融機関は、担保である在庫や売掛金の残高を定期的に報告してもらい、担保価値が維持されているかを確認します。事業者にとっては、在庫表や売掛金の明細を定期的に提出する手間が発生しますが、これはABLの仕組み上避けられない部分です。報告を通じて事業の実態が金融機関に伝わることは、継続的な取引のうえでは前向きに働くこともあります。
依頼先を選ぶ際は、金利や掛目といった条件だけでなく、モニタリングの負担や、担保評価の考え方まで含めて比べることが大切です。金融機関によってABLへの取り組み姿勢や得意分野は異なるため、一行の提示だけで決めず、複数の金融機関に相談して相見積もりの感覚で条件を並べてみると、自社に合った選択がしやすくなります。
9. ABLと通常の融資(プロパー融資)の違い
ABLと、いわゆる通常の融資(無担保のプロパー融資や不動産担保融資)は、どちらも金融機関からの「借入」である点は同じですが、審査で重視される点が異なります。通常の融資では、決算書の内容や自社の信用力、不動産担保の有無が中心に見られます。一方ABLでは、担保にする在庫や売掛金といった事業資産の価値と換金性が評価の軸になり、資産の裏づけがあるぶん、財務がまだ十分でない会社でも利用できる可能性が広がります。
もっとも、ABLだからといって審査がないわけではありません。担保資産の評価に加えて、事業の内容や資金の使いみち、返済の見通しも当然に確認されます。また、担保管理やモニタリングの手間がかかるぶん、少額の融資には向きにくい面もあります。ABLは「不動産がなくても、事業資産を活かして借りられる」選択肢である一方、管理コストを伴う仕組みであることも理解しておく必要があります。
10. ABLとファクタリングの違い|「借入」か「債権の売却」か
売掛金を資金化する方法として、ABLとよく比較されるのがファクタリングです。両者は「売掛金を使って資金を得る」という点では似ていますが、法的な性質がまったく異なります。ABLは売掛金を担保にした「借入」であり、借りた元本は返済していきます。これに対しファクタリングは、売掛金そのものを業者に「売却」して代金を受け取る取引で、原則として返済という概念がありません。
この違いは、貸借対照表への表れ方にも影響します。ABLは借入なので負債が増えますが、ファクタリングは資産である売掛金を現金化する取引のため、負債を増やさずに資金を得られるのが一般的です。一方でコスト面では、ファクタリングの手数料はABLの金利より高めになりやすい傾向があります。また、償還請求権のないファクタリングでは売掛先の未払い時に買い戻し義務が生じないのが一般的ですが、ABLは借入である以上、売掛金が回収できなくても返済義務そのものは残ります。
どちらが適しているかは、資金の必要な期間やコスト、負債を増やしたくないかどうか、といった事情で変わります。継続的に事業資産を活かして資金を回したいならABL、単発でスポット的に売掛金を早期資金化したいならファクタリング、といった大まかな使い分けが考えられますが、実際には自社の状況に応じて専門家を交えて検討するのが安全です。
11. ABLの会計・税務上の扱いと対抗要件
ABLは担保を用いた借入であるため、会計・税務の扱いにも押さえておきたい点があります。ABLで用いられる譲渡担保は、形式上は担保資産の所有権を金融機関に移す形をとりますが、経済的な実質は担保であり、事業者は引き続きその資産を使って事業を続けます。そのため会計上は、担保に入れた在庫や機械を自社の資産として簿価に残したまま、受け取った資金を借入金として計上するのが一般的な考え方です。
ここで理解しておきたいのが「対抗要件」です。動産を担保にする場合は動産譲渡登記、売掛債権を担保にする場合は債権譲渡登記といった制度を使って、担保の権利を第三者にも主張できるようにするのが一般的です。これらの登記により、同じ資産をめぐる他の債権者との関係で、金融機関が担保権者としての立場を確保します。登記には費用や手続きが伴うため、その負担も含めて条件を確認しておくとよいでしょう。
税務面では、譲渡担保は形式的に所有権が移っても、実質は担保であるため、その設定自体が直ちに課税の対象となる資産の譲渡として扱われるわけではない、という整理が一般的です。ただし、担保が実行されて資産が処分された場合や、消費税の取り扱い、支払利息の損金算入など、細かな論点は個々の状況で変わります。譲渡担保の会計処理や税務は専門性が高い分野なので、契約や決算の前に顧問税理士へ確認し、自己判断で進めないことをおすすめします。
12. ABLのメリットと注意点|どんな事業者に向くか
ABLのメリットは、なんといっても不動産や個人保証に頼らずに資金を調達できる点です。在庫や機械、売掛金といった事業資産を多く持つ会社にとっては、これまで眠っていた資産を資金調達の裏づけにできる意味は大きく、事業規模に応じた資金を確保しやすくなります。とくに、在庫や売掛金が大きい製造業・卸売業・小売業などでは、活用の余地が広い手段といえます。
一方で注意点もあります。担保評価やモニタリングに手間とコストがかかるため、少額の資金需要には向きにくいこと、掛目によって担保評価額の満額を借りられるわけではないこと、そして借入である以上、返済義務が残ることです。担保にした在庫が大きく減れば借入枠が絞られることもあり、日々の資産管理と報告を継続できる体制が求められます。以下のような点を、利用前に確認しておくと安心です。
- 担保にできる在庫・機械・売掛金の内容と、想定される掛目の水準
- モニタリング(定期報告)にかかる事務負担に対応できるか
- 金利・登記費用・評価費用まで含めた実質的なコスト
- 会計・税務上の処理について、必要に応じて専門家に確認したか
ABLは万能の手段ではありませんが、不動産担保に頼れない事業者にとって有力な選択肢の一つです。焦って一行だけで決めず、複数の金融機関に相談し、自社の資産と資金繰りに合った条件かどうかを落ち着いて見極めることが、無理のない活用につながります。
13. まとめ:ABLは資産を活かす資金調達、掛目とリスクを理解して選ぶ
ABL(動産・売掛金担保融資)は、不動産に頼らず、在庫(棚卸資産)や機械設備、売掛金といった事業資産を担保に資金を借り入れる仕組みです。担保にできる資産の換金しやすさや価値の把握しやすさによって評価が変わり、実際の融資額は担保評価額に「掛目」を掛けた水準になる点が、ABLを理解するうえでの要になります。在庫・機械・売掛金それぞれで見られ方が異なり、集合譲渡担保やモニタリングといったABL特有の考え方も押さえておきたいところです。
ABLは金融機関からの借入であり、売掛金を売却するファクタリングとは性質が異なります。譲渡担保や動産・債権譲渡登記といった法的な仕組み、会計・税務上の扱いには専門的な論点も多いため、金額の大きい取引では税理士など専門家への確認が安心です。まずは自社にどんな事業資産があるかを整理し、複数の金融機関に相談して条件を比べながら、不動産に頼らない資金調達の選択肢として検討してみてください。
よくある質問(FAQ)
ABLとは、そもそもどのような資金調達ですか?
ABLはAsset Based Lendingの略で、日本語では動産・売掛金担保融資と呼ばれます。土地や建物といった不動産の代わりに、在庫(棚卸資産)や機械設備、売掛金など、事業そのものが生み出す資産を担保にして金融機関から資金を借り入れる仕組みです。不動産を持たない会社や、個人保証に頼らず資金を調達したい会社にとって、事業資産を活かせる選択肢になります。借入である点はファクタリングと異なります。
ABLではどんな資産を担保にできますか?
大きく動産と債権に分かれます。動産は商品在庫や原材料などの棚卸資産、製造機械や工作機械といった設備が中心で、農産物や家畜など特殊な在庫が対象になることもあります。債権は取引先への売掛金(売掛債権)が中心です。ABLでは、日々入れ替わる在庫や売掛金の全体を「集合」としてまとめて担保にする形が多く使われます。換金しやすく価値を把握しやすい資産ほど、担保として評価されやすい傾向があります。
掛目(かけめ)とは何ですか?
掛目とは、担保にする資産の評価額に対して、実際にいくらまで融資するかの割合のことです。たとえば評価額1,000万円の在庫に掛目70%が設定されれば、借りられる金額の目安は700万円になります。いざ担保を換金するときに評価どおりの金額で売れるとは限らないため、金融機関は換金時の目減りや価格変動リスクを見込んで、あらかじめ融資額を抑えています。資産の種類や換金のしやすさによって掛目は変わります。
在庫を担保にして資金調達するとき、在庫は売ってもよいのですか?
通常の営業のなかで在庫を売り、また仕入れる循環は認められるのが一般的です。ABLでは、その時点で存在する在庫の集合を担保にする集合動産譲渡担保の形が使われるため、日々の商売は続けられます。ただし、担保全体の価値を大きく損なうような処分は制限され、在庫の数量や金額は金融機関へ定期的に報告する必要があります。在庫が大きく減れば借入枠が調整されることもあるため、報告を怠らないことが大切です。
ABLとファクタリングは何が違いますか?
法的な性質が異なります。ABLは売掛金や在庫を担保にした「借入」で、借りた元本は返済していきます。一方ファクタリングは、売掛金そのものを業者に「売却」して代金を受け取る取引で、原則として返済という概念がありません。ABLは借入なので負債が増えますが、金利はファクタリングの手数料より低めになりやすい傾向です。継続的に資産を活かして資金を回すならABL、単発で売掛金を早期資金化するならファクタリング、といった使い分けが考えられます。
不動産を持っていない会社でもABLは使えますか?
ABLはまさに、不動産に頼らずに資金を調達したい会社に向いた仕組みです。在庫や機械、売掛金といった事業資産の価値と換金性を評価の軸にするため、担保にできる不動産がなくても利用できる可能性があります。ただし、担保資産の評価に加えて事業の内容や返済の見通しも確認され、担保管理やモニタリングの手間もかかります。少額の資金需要には向きにくい面もあるため、自社の資産規模に見合うかを確認して検討しましょう。
ABLの会計・税務上の扱いはどうなりますか?
ABLで使われる譲渡担保は、形式上は資産の所有権を金融機関に移しますが、実質は担保であり事業者は引き続き資産を使えます。そのため会計上は、担保に入れた在庫や機械を自社の資産として簿価に残したまま、受け取った資金を借入金として計上するのが一般的な考え方です。税務面でも譲渡担保の設定自体が直ちに課税の対象になるわけではないと整理されますが、細かな論点は状況で変わるため、契約や決算の前に顧問税理士へ確認すると安心です。
ABLを利用するとき、依頼先はどう選べばよいですか?
金利や掛目といった条件だけでなく、担保評価の考え方やモニタリング(定期報告)の負担、登記費用まで含めて比べることが大切です。金融機関によってABLへの取り組み姿勢や得意分野は異なるため、一行の提示だけで決めず、複数の金融機関に相談して条件を並べてみると、自社に合った選択がしやすくなります。急ぎの資金需要があるときほど、落ち着いて比較する時間を確保しましょう。
✏️ 神山 哲也より
資金繰りの取材をしていると、「うちには担保にできる不動産がないから」と資金調達をあきらめている経営者に、たびたび出会います。けれども話を伺うと、倉庫には相応の在庫があり、取引先への売掛金も毎月まとまった金額で立っている。つまり、担保になりうる資産は、実は事業のなかに眠っているのです。ABLは、その眠っている資産を資金調達の裏づけに変える発想だと感じています。ただ、私が必ずお伝えしたいのは、ABLはあくまで「借入」であり、掛目によって担保評価額の満額を借りられるわけではない、という点です。現金化された安心感だけで判断せず、返済の見通しと、在庫や売掛金を定期的に報告し続ける体制が自社にあるかを冷静に見てほしいと思います。そして、譲渡担保や登記、会計・税務の扱いには専門的な論点が多くあります。急いでいるときほど一行の提示で決めず、複数の金融機関に相談し、判断に迷う部分は税理士に確認する。この二つを習慣にするだけで、資金調達の安全度は大きく変わります。
監修:税理士 増田 良之
